美しき里で育つ、美濃白川茶

テロワールが生み出す、「香り高きお茶」

「いやー、すごくいいところですね! こんな景色の素晴らしいところに、茶畑があるんですね」

車を降りた井上康生さんが思わず声を上げた場所は、岐阜県東白川村の五加地区。川沿いの段々畑に、見渡す限り一面の茶畑が広がっています。

「ここは、東白川村の自然環境が一番わかる、象徴的な場所なんです。真ん中に清流・白川が流れていて、その両側が谷になっている。そこを埋め尽くすように茶畑広がる。昔ながらの営みを見ることができる場所なんです」。

東白川村の茶農家であり、茶師でもある森本健二さんが、井上さん・小堀さんに美濃白川茶の魅力を教えてくれました。茶道家の小堀宗翔さんも、美濃白川茶の産地にやってくるのは初めてです。

「ここで作られる茶葉は、どんな特徴なんですか?」

「爽やかな香りが特徴です。それは、東白川村特有の地形からきています。ほら、お茶の産地で有名な静岡や九州は、平らなだだっ広いところでお茶を作っていますよね?でも、ここは、谷の地形を利用して、山の斜面に茶畑を作るしかない。川から立ち上った朝霧が畑を覆うことで香り高い茶葉になります。また、太陽の光を遮ることで、茶葉の旨味成分が増幅されるんです」。

ワインと同じように、お茶にもテロワールがあるのだ。

お茶は“薬”だった!? 健康長寿のドリンク

「お茶作りの歴史は古いんですか?」(井上)

「美濃白川茶は、今から450年ほど前に、ここにあった『幡龍寺(ばんりゅうじ)』というお寺の住職が京都の宇治から茶の実を持ち帰り、村人たちに配って栽培を始めたのが最初と言われています。当時は、お茶は薬として使われていて、疫病などの予防のために飲まれていたそうです」(森本)

「最初は、薬だったんですね。実は、わたしたち柔道家も、試合前にリラックスしたり、体脂肪を燃やすために効能を理解して飲んでいたりします」(井上)

井上さんが話されているように、お茶にはリラックス効果や抗ストレス効果を高める「テアニン」や、体脂肪を燃やす効果がある「茶カテキン」や「カフェイン」が含まれています。

もともと、平安時代に中国から日本にお茶を初めて持ち込んだとされる最澄・空海・英西などのお坊様たちも、「お茶は内臓を強くする薬である」という認識のもと、健康長寿の秘訣としてお茶を飲んでいたようです。

オンリーワンの「ブランド茶」を目指して

いま、東白川村では、品評会にかけるような「高級茶」の生産も始まっているそうです。

「お茶の業界では、『宮崎は釜炒り茶』『宇治はお抹茶』のようなブランドがあります。でも、美濃白川茶は、まだブランディングがしっかりできていません。そこで、“香り”を売りにして、付加価値のあるお茶を作っていきたいと思っているんです」(森本)

「実は、わたしは宮崎出身でして(笑)」(井上)

「そうなんですね!」(森本)

「確かに、地元・宮崎はお茶のブランドのイメージがあります」(井上)

「東白川村も、これからブランドとして売り出していきたいなと」(森本)

東白川のお茶は茎が細く、枝がしっかりとしていて、大地の養分や水をしっかり引き上げてくれるので、旨みがしっかりとあることも大きな特徴だそうです。

「ワインと同じように、“味と香りの両方を楽しめるお茶”。それが、東白川のお茶の魅力です」

美濃白川茶の味は、どんなものなのか? 井上さん・小堀さんは、実際にお茶を飲ませてもらうため、茶工場へと向かいます。

この続きは「ニュー茶道」#01『茶師と飲む』へ。

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