ホテルを、茶室に見立てる

日本の美が宿る場所=茶室
黒漆で拭き上げられ、漆黒の艶に輝く床。手漉きの和紙に鉄や銅を媒染して、水墨画のような風合いを出した壁紙。針のように細い竹を精巧に組み合わせた、竹細工の照明。
「美の茶会 01」の舞台は、美の茶会を主催するホテル『Zenagi(ゼナギ)』を貸切にして行うことに。江戸時代に建てられた巨大な古民家を、“禅”をコンセプトにイノベーションさせた、いま話題の宿泊施設です。
「これは、本当に圧巻の世界観ですね。これだけ広いスペースがあって、そこに“日本人の美意識”が詰め込まれている」(井上)
「完全にアート空間ですよね。茶室も日本のアートを集めた場所なので、同じものを感じます」(小堀)
今回は、遠州流宗家の小堀宗翔さんの発案で、Zenagiの広大なリビングを“巨大な茶室”に見立てて、小堀さん自らのお手前でお抹茶を振る舞っていただきます。

「日常にアートを見出す」 日本人ならではの美意識
「“見立て”は、日本文化ならではの考え方ですよね。固定観念に囚われずに、新たな価値を創造する。千利休をはじめ、お茶の世界では古くから取り入れられてきた技法です」(小堀)
茶道に、日本人の美意識を融合させたと言われる千利休には、有名な“見立て”のエピソードがいくつも残されています。
ある時は、漁師が腰につけていた「籠(魚籠)」を花入にしてしまったり。ある時は、胡麻などをする「すり鉢」を水差しにしてしまったり。
ただ、利休は決して奇をてらったわけでなく、自らの審美眼を通して「美しい」と思えるものを平等に評価した上で、日常の中で見落とされていたものの中にアートを見出し、茶会に持ち込んだのです。
「この空気感、茶室と同じですね。清らかな空気が流れていて。心地のいい緊張感がある」(井上)
美の茶会、今回は「立礼(りゅうれい)」と呼ばれる、椅子を使った茶席にすることに。小堀さんがお茶を立て始めると、場の空気がまた変わりました。空気がさらに静まって、どんどんと澄んでいくのを感じることができます。

茶道はアートであり、コミュニケーションである
「今日は、茶道の所作の意味について、少しお話をさせてもらいながら、お茶を立てさせていただきますね」(小堀)
「是非、よろしくお願い致します」(井上)
「まずはお湯でお茶碗を清めながら、自分自身の心を清めていきます。『ご覧になっているお客様の心も清め、お茶を召し上がっていただく。汚れのない、清涼な気持ちで召し上がっていただく』そのための作法です。
続けて『空手水』。わたくしたちの五本の指には、万物を構成する5つの要素があると言われていまして、薬指が”水の指”と言われています。薬指と薬指をすり合わせることで、水を呼び込むという意味がございます」(小堀)
「すべての所作に、意味が込められているのですね」(井上)


日本を代表する茶道の家に生まれ育った小堀さんは、小さな頃から茶の湯に親しむ中で、強く感じていることがあるそうです。それは、茶道とはアートであり、コミュニケーションの手段であるということ。
「茶道って難しく考えられてしまいがちですが、わたしたちは、『お客様を喜ばせたい!』という、ただその気持ちだけなんです。それが、いろいろな所作につながっていたり、お花や掛け軸やお庭というアートにつながっているだけ」(小堀)
今回の「美の茶会01」では、お茶碗も「漆器のうつわ」を見立てました。Zenagiのある木曽地方で素晴らしい漆器を生み出し続ける、木地師/塗師の小椋正幸さんの作品です。
このうつわが、Zenagiの空間や、小堀さんのお手前とシンクロするように、美を一段と高めてくれます。お抹茶の美味しさはもちろんですが、アートとしての空間や茶道具、アーティストとしての茶道家の所作などの全てが合わさって、お客様の体験価値が上がるのです。
「本当に贅沢な時間で、特別な体験をさせていただきました。ありがとうございました」(井上)
「わたしにとっても、いろいろな発見があり、楽しませていただきました。こんな素敵な茶会に参加させていただき、感謝です!」(小堀)



