女性作家たちのうつわ

元・花火師が作るガラスのうつわ

温泉に入りながら、かき氷を使った冷たいほうじ茶を飲んだガラスの器は、美濃の御嵩町に工房を構える「glass studio 三日月」のもの。奥村源基さんと、奥さまの弥生さんご夫婦が、共同でグラスなどを作り上げています。

「もともと私たちは、打ち上げ花火の花火師として働いていたのですが、個人の力で制作・独立が可能な素材を探していたころ、吹きガラスと出合いました。ガラスは衝撃を与えれば容易に割れてしまいますが、その繊細で儚いところに花火と同じ魅力を感じたのだと思います」

なんと花火師からガラス作家へと大胆な転身をされた奥村さんご夫婦! しかし、いま作られている作品を見れば、花火のような”繊細さ”や”儚さ”が表現されていることがわかります。

「やっぱり、大らかなデザインのものより、繊細で緊張感のあるデザインのものを好んで作っています。普段使いの器として、強度や使い勝手も大切にしながら、丁寧に中心を取り、カップ、ステム、フットのバランス、佇まい、それらがすべてが美しくなるよう意識して制作しています」

「最初に、美の茶会の岡部さんが工房に来られて『かき氷を入れて、お風呂に入りながらお茶を飲むためのグラスを探している』と聞いた時は、想定外の用途でワクワクしました。今回選んでいただいたグラスは、普段使いのデザートカップとして制作したものです。アイスやヨーグルトを食べるときに、脚付きの器なら少し贅沢な時間に感じられると思って作ったものです」

今回、美の茶会がセレクトしたのは、透明でデザイン性のあるグラス。凹凸のあるボウル部分に光を当てると、反射物がバイヤス状に映り込み、不思議なコントラストが生まれるのが特徴です。温泉につかりながら、かき氷を使った冷たいお茶を飲む。その清涼感と贅沢さを表現するのに、最適なグラスとして使わせていただきました!

【info】
glass studio 三日月
奥村源基さん、弥生さん夫婦によるガラス工房。2020年に、それまで9年過ごした沖縄を離れ、岐阜県御嵩町にUターンし、工房をオープン。「手作りガラスのある暮らし」をコンセプトに、生活に心地よい ”spice” をお届けする。
shopmikaduki.thebase.in
www.instagram.com/mikaduki.glass/

若き才能が生み出す“自然美”のうつわ

茶コールや茶酒を楽しむ際に使わせてもらったのが、故金あかりさんのぐい飲みです。

岐阜に生まれ、家族が美大卒だったことから、アートに触れて育った故金さん。大学で陶芸を学んだ後に、優秀な作家が集まる多治見の意匠研究所に入り、最近卒業されたばかりです。何よりの特徴はその色使い。“自然の色”を落とし込んだ作品で、まだ20代ながらも、2,3年先まで個展スケジュールも埋まっている気鋭の女性作家さんなのです!

「“自然な色”といっても人それぞれ思い浮かべる色は違うと思います。私にとっては、川や海の色、夕日の色、自分が見てきた自然の景色にあった素敵な色……。落ち着いた柔らかな色だけではなく、時にはビビッドな色も思い浮かんできます。緑の木を見た時、よく見れば、その中にある黄緑や黄色、茶色や、赤、沢山の色を見つけることができます。あっさりとした仕上がりよりは少し複雑にすることで深みも出るので、緑を表現したければ、複数の色を混ぜながら緑を表現します。自然が長い年月の末に出来上がっているように、白いうつわに少し色を混ぜることで、単調ではない色を表現することができると思います。

昔から印象派の絵画が好きなことも少なからず作品に影響していると思います。色が混ざり合いながら表現されている絵を見ると、その人が何を感じていたのか、何を伝えたかったのかを少し知れるような気がするんです。自身の手でひとつずつ作るうつわなので、感じている感覚を落とし込むことで、自分が作る意味があると思っています」

彼女のシグネチャーとも言うべき独特の色とテクスチャーや、何十年と使い込んで釉薬が剥がれてしまったような風合い、自然美を感じるカラーコントラストは、どこか物憂げでノスタルジック。彼女にしか出せない魅力を放っています。

Photograph:Keishin Horikoshi
Photograph:Keishin Horikoshi

「今回、茶会でご使用いただいた作品は、半球状の型に土を押し当てて成形する手法で作りました。1度半球ができたら土を継ぎ足す。この工程を3回繰り返します。繰り返すことで土の継ぎ目が浮き出てくるんです。そこに釉薬が溜まり表情が豊かになる。釉薬には2色使っていますが、色が混ざり合っている部分もあります。ラインや色の部分で、自然の中にある要素を取り込むことは、バランスを取る中で考えている大きな要素です。手に取る人が感覚的にそこに気づいてくれたら嬉しいですね」

いつも穏やかな笑顔で語ってくれる故金さん。そんな彼女の夢は、アート市場における焼き物の価値を上げていくことだそうです。

「アートの世界ではクラフト・工芸はピラミッドの一番下なんです。価値を少しでも高めていけたらと考えています!」

現在、ambosのデザイナー・石井一東さんとともに、フレーム(額)と工芸とのコンビネーションプロジェクトも進行中。若き才能の今後の活躍に目が離せません!

【info】
故金あかり
1995年、岐阜県生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科にて陶磁を専攻。在学中から作品販売をスタートする。武蔵野美術大学を卒業後、多治見市陶磁器意匠研究所で3年間学び、今年3月卒業。作家としての活動を本格化させる。個展のオファー、作品の注文が絶えない、今最も輝く美濃焼作家の一人。
www.instagram.com/karugane_akari/

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