茶師と飲む

めくるめく“お茶の世界”へ、ようこそ!

日本を代表する柔道家・井上康生さんと、茶道家・小堀宗翔さんをお招きするなら、
お二人がこれまで体験したことのないような茶会をセッティングしたい!
そんな思いから、わたしたちご用意させてもらったのが、「茶師にお茶を淹れてもらう茶会」です。

茶師とは、茶葉を「選定」して、「合組(ブレンド・調合のこと)」することで、最高のお茶を生み出す“お茶のスペシャリスト”のこと。
ワイン作りでいうならば醸造家。ウィスキーでいうところのブレンダーにあたる”職人”です。

今回は、450年以上の歴史を誇る“美濃白川茶”の産地である東白川村で、数少ない茶師を任されている森本健二さんに、めくるめく“お茶の世界”の楽しみ方を教えてもらいました。

知られざる、“茶師”の仕事とは?

「あまり知られていませんが、お茶は『シングルオリジン』(単一の茶畑で摘んだ茶葉だけで作られるお茶)よりも、『ブレンド』(複数の畑の茶葉を調合して、味を整えて作るお茶)の方が圧倒的に多いです。

 毎年、新茶の時期になると、東白川村で点在しているいくつもの畑から集まってくる数十種類の茶葉をすべて目利きして、その中から選び抜いた茶葉だけを買い付け、自ら焙煎やブレンドをして“最高のお茶”を生み出す。それが、わたしの仕事です」

東白川村の茶工場を訪れた井上さん・小堀さんに、茶師の仕事をわかりやすく説明してくれる森本さん。
その話しぶりからは、茶師としての「誇り」「プライド」のようなものが感じられます。
地元・岐阜生まれの森本さんは、12年前に美濃白川茶と出会い、茶業の奥深さに惚れ込んで

「これは自分の生涯の仕事になる」と直感し、茶師になったそうです。

普段からお茶が大好きの井上康生さんは、“茶師”という職業に興味津々で、質問を投げかけます。
「いいお茶というのは、何か基準みたいなものがあるんでしょうか?茶師の方々は、どうやってそれを見極めていらっしゃるのですか?」

「茶葉によって味も香りもまるで違うんです。そんな中で、甘み・旨み・渋み・苦みといった滋味のバランスで整えて、見た目の色や、立ち上がる香りも考えて、最高のお茶を生み出す。こんな面白い仕事はないと思っています」

そう言うと、森本さんはお盆に載せた茶葉を見せてくれました。

茶師が目の前で煎じた最高級茶の衝撃

今回の茶会では、茶工場の中に特別に茶席をセットして、井上さん・小堀さんの目の前で2種類のお茶を淹れていただきました。1杯目は、茶師・森本さんが「最高傑作」と胸を張る、「極み」
東白川村の中でも、特級の畑で育てられる茶葉で、品評会用に農家がすべて手摘みしたものです。

50度の低い温度のお湯で茶葉に熱をゆっくりと入れることで(旨み成分を熱で壊さないようにして)、じっくりと味を引き出していきます。この待ち時間が、またなんとも楽しい。思わず井上さんも小堀さんも、手元を覗きこんでいます。

そして、片口で入れてくれたお茶は、ほんのり薄めの緑色で、爽やかな香りがします。

「旨みがすごい!」(井上)
「わー! お出汁のような味ですね!?」(小堀)
「目をつむって飲んだら、そう思う人も多いと思います。この◯◯茶はテアニン(アミノ酸)が非常に豊富に含まれているんです。それが、この旨みになっています」(森本)

「本当に昆布出汁のようです。想像していたものよりも遥かにすごい、インパクトが違いました」(井上)

香りで飲む! 贅沢な「ほうじ茶」

2杯目は、茶葉を焙煎して仕上げる「ほうじ茶」です。森本さんはコンロに火をつけると、”焙烙(ほうろく)”と呼ばれる道具に茶葉を入れて、まるでフライパンでチャーハンを炒めるように茶葉を焙じていきます。

「いい香り!」(小堀)
「これは食べても美味しいんですよ。塩かけて食べると酒のつまみにすごく合います」
(森本)
「へぇ~!!」(井上)

茶葉を焦がさないように焙烙をふり続けること1,2分ほど。今度は、香りを立てるために、熱湯でお茶を淹れます。

「上品な味ですね~!」(井上)
「いい意味で、ほうじ茶っぽくないですね。本当に上品」(小堀)

「ほうじ茶っていうと、和食屋さんとかで“とりあえず”出てくる、安めのお茶のイメージがありますよね?  煎茶では飲めないものを、ほうじ茶にするような。でも、いまは考え方も変わってきていて、ほうじ茶に合うような良い茶葉を選りすぐって作る。ちょっとVIPな、ラグジュアリーな香りを感じてもらえるお茶。これもまた新しいお茶の楽しみ方ですかね」(森本)

これまでのほうじ茶のイメージを完全に覆すような“リッチな香り”に、井上さん・小堀さんも感動した様子。

「われわれが知っている『一般的なお茶』とは違う、すごいお茶の世界があるんだなと感じました。両方とも、今までに飲んだことのない味のお茶で、『これがお茶なのか!』と驚かされました。すごく美味しかったです。ご馳走さまでした」(井上)
「煎茶の新しい世界を見た気がします!」(小堀)
「お二人の美濃茶の魅力を体験してもらえて幸せでした。ありがとうございました」(森本)


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